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サウンドトラック
エツィオ・ボッソとイタリアン・サウンドトラック・ニューウェーヴ  馬場敏裕(タワーレコード渋谷店 サウンドトラック)

ほとんど語られる機会がないのですが、イタリアの映画音楽界は、映画界そのもののニューウェーヴ台頭と相俟って、目を見張るばかりの新しい才能を輩出しています。
もちろん、『ぼくは怖くない』の音楽を任されたエツィオ・ボッソも、そのひとり。コントラバス奏者である一方、繊細な映画を演出する室内楽的サウンドトラックを時に創造して、今回のように映像を詩にかえています。

最近のイタリアン・サウンドトラック・ニューウェーヴ(と僕は呼んでいますが)をチェックしておられる方なら、彼の1999年作の、こちらも美しくミニマリズムに満ちた傑作"UN AMORE"(監督 GIANLUCA MARIA TAVARELLI:サントラは名門CAMレーベルよりリリース)が記憶に残っていることでしょう。
そして、おそらくCDがリリースされたものとしては2作目になる『ぼくは怖くない』はサントラ盤では短い音の断片がいくつか束ねられ、「DANZA」というタイトルで組曲的に構成されています。ボッソとしては、現代舞踊の伴奏音楽をイメージしているのかもしれません。


イタリア映画の現在の傾向を見るからにすばらしいと思う点は、とにもかくにも、人間を深く見つめたドラマの作品がほとんどを占めることで、しかもそれらの多くがクオリティの高さとユニークなアプローチということで、観客にも絶賛で迎えられているということです。

僕がイタリアの新しい映画音楽に興味を持っているのも、ほかの国の映画音楽とは違った、独特の深さがどんどん極められている感覚に満ちており、例をあげると傑作『炎の戦線・エルアラメイン』のピヴィオ・アンド・アルド・デ・スカルツィやアンドレア・グエッラ、新感覚派としては中堅といってもいいパオロ・ブオンヴィーノやカルロ・シリオットといった人たちを筆頭に、ニーノ・ロータ、エンニオ・モリコーネの次の世代のサウンドが映画にできることが果敢に試されているからです。



そんな中で、過去のイタリア映画祭で上映された『もうひとつの世界』の音楽で絶賛されたピアニスト、ルドヴィゴ・エイナウディというアーティストが人気を博してますが、エイナウディの標榜する「身近なブライアン・イーノ」「優しいマイケル・ナイマン」とでもいいたいハートウォーム性と、冷やかなイメージがあるミニマル・ミュージック(短いフレーズを反復する音楽)の境界を行き来するサウンドは、現代イタリア映画音楽の特徴のひとつと考えても差し支えないと思いますが、ボッソの創造するサウンドも、その特徴に則したものといえるでしょう。

『ぼくは怖くない』は映画そのものが、ハートウォームなベースを持ちながらも、冷やかにドラマを見つめようとしているかに見えます。
しかし「人間がまず好きでたまらないからこそ、冷静に考える」姿勢が映画にも、ボッソの音楽にも感じ取れるのです。ボッソの音楽はシンプルこの上ないですが、「映像を喚起する音楽」が最高の映画音楽だとしたら、最高の部類に入ることは、見終わったあとに、彼の音楽を思い起こせばわかるにちがいありません。