これ以上の親密な協調はありませんでした。2,3ページ書き上げた段階ですぐに私は彼にそれを読んでくれと言いました。彼は私をよく知っていますから、私が執筆を始めるといつも彼は寛大で非対立的で励ましてくれるのです。
 お陰で仕事への意欲を失わずにすみます。脚本が上がったときになって初めて彼は首を突っ込み始めて、文句をつけたり要求をしたりするのです。私がリライトをし続けるものですから、(時には10回も)それは決して絶対に正しいものではありませんから、数年間の議論と不賛成を生みます。最終から数えての2、3脚本のリライト段階になって我々は一緒になってパソコンの前に座ります。そこへきて彼はずうずうしくも自分で書きこんだシーンを幾つか入れるわけです。



 一旦撮影が始まってしまうと、議論をしている時間はありません。そこで私はロケ地をたまに訪れる程度に控えました。撮影はとても厳しいもので、ヤンの頭はまさしく破裂寸前の風船のようなものでしたから、私は邪魔をしたくなかったのです。



 私が覚えている限り重大なものはありませんでした。いくつかの小さな点だけでした。例えば脚本ではカレルとスーザンは2人とも赤毛です。同じ髪色をしていたわけですが、どちらの俳優にもこれはあてはまっていません。ですから彼等は2人に共通の別な点を与えました。彼等は2人とも左の鼻の穴が右よりも小さいのです。
 しかしもっと重要なことをもありました。脚本にはミロフの囚人たちがお城の塔のてっぺんについている赤い電球でできた襟章をつけた看守を見るシーンがありました。監督はそのかわりにコウノトリの巣をてっぺんから落とすことに決めました。表現が薄くイデオロギー色を薄くしたほうが良くなるように彼には思えたのです。



 このような兵士はとりわけ理解しがたいものです。彼等が味わったに違いない屈辱と皮肉は我々の想像をはるかに超えるものです。彼らは、もう一つの全体主義体制が自分達が敵対して戦った相手と入れ替わった瞬間に起きた歴史の重大な出来事の間に埋もれてしまったのです。ミロフ刑務所は『ダーク・ブルー』のもう一つの層でもあります。私はこの状況の残酷なパラドックスが伝わることを望んでいます。しかし外国の観客がそれを100%評価してくれるかどうかには自信がありません。多分無理でしょう。



 ミロフ刑務所の経験を持っていたり、その他の社会的な不名誉を味わった人々と話をすると、私は彼等の平静さと恨みのなさに圧倒されました。彼等は自分の良心にしたがって生き、苛まれ続けた全ての不公平、それを彼等は自己憐憫をすることなしにその後担ったのです。彼等は賞賛されて然るべきなのです。



 はい。我々は何人かと彼等の自宅で会いました。これは喜ぶべき出会いでした。Joseph Jaske少佐のことを思い出しますね、彼はパラシュートなしで1000メートル上空から海に墜落して生き延びたのです。
若かりし頃にヒトラーから文明を救うため力を尽くした人々に出会うことができたこの機会は、この映画に携わることを歓びにしてくれました。


 どんな感動を与えるかは分かりません。劇場が満員であるときはいつでも、そこは若者で溢れています。若者にとって第二次世界大戦は中世と同じ位距離感のあるものなのです。そんな彼等にお祖父さん達の戦争時代には自分の命が危機に瀕していたということを分からせることができれば嬉しいことです。全てのチェコ人が我侭で意気地なしだったわけではないことを喜ばしく思うかもしれません。しかし単に『ダーク・ブルー』のヒーローたちに恋をするだけでも十分です。不変でしばしば繰り返し語られる愛と友情の物語が若者たちにそう感じさせる手助けになることでしょう。


原題:DARK BLUE WORLD/2001年度作品/チェコ・イギリス合作映画/上映時間:112分/カラー/シネマスコープ/ドルビーSRD
サントラ盤:ランブリング・レコーズ/ノベライズ:角川文庫刊/後援:チェコ共和国大使館
協力:キリンビール(株),株式会社ローソン,オリヂナル(株)
提供:スタジオジブリ日本テレビ/博報堂/ニューセレクト 配給:アルバトロス・フィルム