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初日トークイベント“世紀のミニマリスト対談”実施レポート

2016/04/13 16:53 up!

4-9

「モノもヒトも、“適量”がちょうどいい」
世紀のミニマリスト対談が実現!
映画『孤独のススメ』初日トークイベント オフィシャルレポート

4月9日(土)に公開初日を迎え、新宿シネマカリテにて初日トークイベントを実施いたしました。この日、トークイベントに登壇したのは、「僕たちに、もうモノは必要ない。」著者でミニマリストの佐々木典士さんと、「モノが少ないと、快適に働ける。」著者でステーショナリー ディレクターの土橋正さん。ともに数々のメディア出演やイベントに立ってきた二人だが、顔を合わせるのはこの日が初めて。佐々木さんは「地味な映画をイメージしていたのですが、想像の5倍くらい面白くて…(笑)。自分がモノを減らしていって感じた解放感と主人公が自分らしさを取り戻す過程に通じるものがあって、ストーリーも手に汗握る展開と感動があって良い意味で裏切られました」と魅力をPR。土橋さんは「少し昔の日本映画のような余白が心地よく感じました。本当に自分のやりたいことは自分の心に問いかけるしかなくて、そのためにはしがらみや多すぎるモノといったノイズを減らすことで、自分の心の声が聞こえてくることを再認識できました」とコメント。

極端にモノを減らした生活を送るミニマリストを志したきっかけについて、海外などでバックパックひとつで旅するように仕事をしている人のことを知り、その自由さや身軽さに憧れてモノを減らし始めたという佐々木さん。なんと、かつては掃除が苦手だったという過去も明かしながら、「映画でもフレッドがしがらみから解放されてどんどん自由になっていきますが、まさにああいう感じで、不思議とやったことのないことや苦手だったことに積極的に取り組めるようになりました。常識から少し離れて自分の想うように動いてもいいかな、という心持ちになりました」と自己分析。
土橋さんは仕事柄、かつては文房具に囲まれて仕事をしていたそうで、「好きなものに囲まれて仕事をできるのは幸せだったのですが、あれもこれも使わなきゃと圧迫感を感じるようになってしまって。そこで一度仕事場をレンタルオフィスに移してみるたことで集中力が上がり、仕事場のミニマル化を追求するようになったんです」と転機を語った。

ミニマリストまでいかずとも、シンプルで洗練された生活空間にあこがれる人たちは数多い。そんな「シンプルライフ初心者」へ明日から使える片付け術として、佐々木さんは、「カバンの中とか玄関の一角、冷蔵庫の調味料など、一つのところから始めると他の所に波及していく気がします。最初は一極集中で簡単なところから始めて上手になっていけばいい」とアドバイス。土橋さんは「自分が一日の内一番長くいる場所」を掃除することを提案。自分のベースになる場所だからこそ、モノが少ないことの変化を実感しやすくなるのだそう。書類整理の仕方については、土橋さん流にいうと「流す」作業が必要だそうで「書類はスキャンするか、その場で見て適切に捨てる」ことで膨大に入って来る書類を出すための「回路」を作ることの大切さを語った。

つづいて話題は「モノ」から「人間関係」の整理整頓術へ及び、FacebookなどのSNSによる繋がりが良しとされる一方、特定の意見に同調し、尖った意見が言いづらくなっている現状に対し、二人はどんな心がけを行っているのだろうか。ミニマリズムを通して“適量”という肌感覚が身についている佐々木さん。「人間関係もモノと同じで、増えるほどひとりひとりに使う時間も減ってしまう。少なくても深く付き合ったり、量よりも多様性に重きを置いて、自分に新たな刺激を与えてくれる人との交流を大事にしています」と話すと、土橋さんも「そもそも自分の付き合える時間やパワーには制限があるから、その中でどう割り振るかを考えますね」と共感。また、「積極的に断る」という習慣をつけていると語った土橋さんは、「お誘いを受けたら、直感で面白そうかどうか判断し、あらかじめ“休もう”と決めている時には予定を入れないようにしている」と独自の時間確保術を披露。モノから受ける影響を知り尽くした二人ならではの、ぶれない「人間関係のススメ」に、会場へ足を運んだ観客も注意深く聞き入っていた。

さらに、気になる二人のカバンの中身についても話題に上り、佐々木さんは満員電車でもぶつからない薄手のリュックを愛用中。「部屋が片付いていると持ち物も必然的に片付きます。カバンが軽いと、一駅歩こうという気持ちにもなれますし」と語ると、土橋さんも「カバンを小さくすると必然的にモノが減りますよね」と反応し、カバンの中身をすべて把握できるほど減らしておくことで忘れ物もなくなった、と納得の一言。

最後に、愛着の持てるモノの選び方の極意を方経ってくれた土橋さんは、①ロングセラーであること、②専門メーカーが作ったものであることを挙げ、「同じスケッチブックでも、留め具のリングの色があるだけでノイズに感じたり、逆に描いていると存在感がきえてしまうような『無』の状態になれるペンがあったり…」と、文房具の世界の奥深さを語った。また、佐々木さんはモノを減らすことは自分と向き合うこと、と語り、「気に入っているモノ自体も減らすことになるので、その中で残ったモノが、今自分が興味のあることや自分の好みを教えてくれるんです。「減らすことが正義」と声高に言うつもりは全然なくて。少し行き詰っているな、と感じている人は簡単なところから、ゆるく始めてもらえれば」と背中を押した。

本作同様、自分らしくシンプルに生きる考え方のヒントが詰まった、充実のトークイベントは幕を閉じた。

【プロフィール】
・佐々木典士(ささき ふみお)編集者/中道ミニマリスト 学研『BOMB』編集部、INFASパブリケーションズ『STUDIO VOICE』編集部を経て、現在はワニブックス所属。

・土橋正(つちはし ただし)ステーショナリーディレクター/文具コンサルタント 文具の展示会「ISOT」の事務局を経て、土橋正事務所を設立。