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銀盤を噛め!
大統領の理髪師

なんとか無事に続けられることができた、このコーナー。第2回目は『大統領の理髪師』を噛んでみた次第。

韓国大統領官邸“青瓦台”がある町、ヒョジャドン。そこで床屋を営み、ひょんなことから大統領専属の理髪師となってしまったガンホの姿を通し、激動としかいいようのない60年代初頭から70年代末の韓国史を描き出したドラマであります。
イン・スンマン大統領の不正選挙、パク・チョンヒ将軍によるクーデターと政権掌握、ベトナム派兵、そしてKCIA部長によるパク大統領暗殺といった歴史的事件の数々。それらを目の当たりにして、オロオロしたり怒ったりするガンホを庶民になぞらえ、笑いと涙を織り交ぜながら韓国の人々が当時の政治状況に対して抱いていた思いを浮かび上がらせる巧みな語り口。

さらに、長い独裁政権から抜け出した人々の希望を象徴するかのようなラストシーン(とはいえ、その後のチョン・ドファン政権も光州事件があったりして決して良かったとはいえないのだが)も見事で、まさに文句なしの良作といいたいところだが残念な点がひとつだけ。
それは湿度の高い日に外へ出掛けてしまった貴乃花、もしくはボブ・ディランのようなガンホの髪型について全く触れられていないこと。ガンホといえば、菩薩様にも不動明王にもオバさんにも見える、あの顔面に目がいきがちですが本作に関しては髪型に注目しっぱなし。なのに、劇中では誰も彼の頭について言及しないのです!

だいたい、大統領の理髪師である以前におまえの理髪師は誰よ? 俺が独裁者で「閣下の理髪師を務めます」と、あんなのが来たら射殺まではいかなくてもハサミを没収しますよ。まぁ、そのあたりは韓国映画界の“ケンチョナヨ(気にすんな)精神”を反映していると譲ったとして、せめて髪型にまつわるエピソードぐらいは盛り込んで欲しかった!

たとえば……今日も大統領官邸での仕事を終え、ガンホは夜遅くに我が家でもある理髪店へと帰ってくる。疲れ果ててすぐにでも眠りにつきたいが、少し気を落ち着けてから布団に潜り込もう。そう思った彼は、元学生デモ隊だった青年から教わったボブ・ディランのレコード『ブロンド・オン・ブロンド』(数あるディランの作品の中でも、神々しいまでにパーマが効いた彼の頭が拝めるジャケット)をかけると理髪台に腰をかけて目をつむる。「あぁ、このディランってヤツの歌声は変だけど染みるんだよなぁ。俺はコイツに憧れてパーマをかけたけど、ロットが足りなかったばっかりに……」などと心の中でつぶやくものの、異様なまでにキーの高いディランの歌声になかなか落ち着けないガンホ。それもそのはず、彼はプレイヤーの回転を33 1/3ではなく45に設定していたのだ……なんてシーンを期待したんですけど、あるわけがないですね。
で、噛み心地。店のおばちゃんはガンホ似、壁にはガンホのサイン色紙、皿はすべてガンホの顔が描かれた絵皿。そんな韓国料理店でやたらと美味いキムチを食っていると、歯に何かが挟まってしまう。恐る恐る取り出すると、陰毛とは違う種類の縮れ毛が。でも、この毛が抜群の旨味を引き出しているに違いないと納得してまた口に戻す、といった感じですね。

posted by ALB : 15:20 | フィルムレーベル
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