『ドラえもん』に「こっそりカメラ」というエピソードがある。ドラえもんが未来から持ってきた小さなレンズ型撮影機が、ひょんなことから野良猫の体に装着。そのまま町に飛び出して大騒ぎになるお話で、静香ちゃんが美貌を保つために顔面体操をしていたり、ジャイアンが風呂桶で放ったオナラの泡の大きさを定規で測っていたりと、主要キャラクターのとんでもない姿が暴かれていく。その中で脇役の1人(名前:はる夫)が、ハナクソをコツコツと溜めてボール大までにしてしまっている衝撃的なシーンが登場する。これには劇中のドラえもん&のび太と一緒になって、読者である俺たちも腹を抱えて大笑いしたものだが、同時に「何事もやってみるもんだなぁ」と妙に感心もしたものだった。そんな小学校時代の気持ちを、ふと思い起こさせてくれたのが『プロジェクト・グリズリー』だ。

カナダのオンタリオ州でスクラップ業を営むトロイ・J・ハートビス。彼は山中でグリズリーと遭遇したにも関わらず、なぜか襲われることなく無傷で帰還したという稀有な経験をした。なぜ、襲わなかったのか? その答えを導き出すべく、彼が開発した“対熊スーツ”を着用して同じグリズリーとの再接近に臨む姿を追ったドキュメンタリーであります。このトロイなる男と“対熊スーツ”は、『世界まる見え! テレビ特捜部』でも少しだけ紹介されたことがあるので知っている方も多いのでは? その時は冗談でやってんだろうなと思っていたのですが、本作を観てみるとそれなりに真剣なので驚いた。なんと、納得できる“対熊スーツ”マーク6号を完成するまでにかけた月日は7年、投じた資金は150万ドル。さらに完璧な耐久性を得るために、歴代スーツを着て数十mもの崖から落下してみたり、猛スピードで突っ込んでくるトラックに吹っ飛ばされてみたりと、自らの肉体を使って『マッハ!』のNGシーンみたいなシャレにならない実験を敢行。


それで得られたデータを基に完成させたマーク6号は、ゴム→チタン→鎖かたびら→チタン→エアバッグの5重装甲で、炎に包まれようと、12メートルの高さから振り落とした150キロの丸太をブチ当てられようと、バットや棒を持った男たちに袋叩きにされようと大丈夫という最強のものに。しかし、それだけに重量は半端ではなく、内部もギッチギチ。おまけにトロイ自身が閉所恐怖症で、グリズリーと対峙する以前に装着の時点で息が上がっている始末。装着しても、その動きは生まれたての馬や牛よりも遅い。そんなこんなが重なって、肝心のグリズリーとの再会は本気で萎えてしまうような結果に。


本編はしょうもない形で幕を下ろしますが、この作品のおかげでトロイはカルト的な人気を獲得。なんと、98年には“防熊スーツ”開発を讃えられてイグノーベル賞で安全工学賞を受賞、さらに03年には人気アニメ『ザ・シンプソンズ』第15シーズンに彼の行動をパロディにしたエピソードが登場! どんなにくだらないことでも、確固たる信念をもってやり続ければ偉業になる。まさに、“継続は力なり”を地でゆく男。俺も彼を見習って、このコーナーを続けていきたい所存であります!
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