
多くの人々が乗り合わせる電車。そこでは、乗客の数だけの思惑、欲望、業などが
立ち込め、飛び交い、渦を巻き、ちょっとしたドラマを生み出すことがある。そんな
瞬間に立ち合わせた時、俺の頭の中にはオジー・オズボーンの名曲「クレイジー・ト
レイン」のサビがガンガンと鳴り響くのであります。
いまじゃ、誰も見向きもしねぇ「ミシュランガイド東京2008」。これ見よがしに、そ
の赤い表紙をめくりながらカロリーメイト(おそらくポテト味)をかじっている30代
前半のサラリーマンを見つけました。
I'm going off the rails on a crazy train
架台と北極のとこの軸に紐を結わえ、ショルダーバック状態にした球径50センチの地
球儀。それを肩から掛けたおばさんが、高田馬場で駆け込み乗車してきました。汗だ
くになってゼイゼイハァハァいってる彼女の手には、かろうじてペンギンの黒い背だ
けが判別できる、退色しきったSuicaが握られていました。
I'm going off the rails on a crazy train
“東京ディズニーなんたら”と書かれたグシャグシャのビニールバッグを抱えた、そ
ういうところの帰りと思わしき爆睡中のカップル。女は顔を真上に向けて大口を開
け、男のほうはジーンズのチャックを全開にしていました。ほんとうに相性のいい2
人なんだなぁと思いました。
I'm going off the rails on a crazy train
夕刻。ドアが開くやサッと車内に乗り込み、網棚に捨てられた雑誌をスッと手に取っ
て、スマートぶりを見せつける50代なかばのサラリーマン。でも、ゲットしたのは高
収入アルバイト情報誌“てぃんくる”でありました。気付いて網棚に戻そうにも、す
でに他の客のカバンがギッシリで置くスペースなんてナッシング。ほどなくして、彼
は諦めた表情でページをめくりはじめました。
I'm going off the rails on a crazy train
「尻に吹き出物があるってのに、それを治さず撮影に臨むAV女優ってどうなんだ
ろ?」と、昼下がりの車内で思案していた俺。すると、女子高生2人組が「アイツ、ヤ
バくね?」とコソコソ盛り上がり。「お、変なのがいんのか」と、期待交じりに彼女た
ちの目線と指差す先を追いかけてみると軌道上には俺しかいませんでした。
I'm going off the rails on a crazy train
というわけで、今月は『プリズン』であります!


ブラックゲート刑務所の看守が、自宅で拳銃自殺を遂げる。死ぬ動機が見当たらず、
彼の指2本が切断されていたことから、刑事ターナーは自殺ではなくて事件であると
睨む。手掛かりを求めて刑務所を訪れるが、そこでは囚人たちの自殺が相次いでいる
ことが判明。やがて、それぞれの死体には熱傷の痕があり、50年前の火災後に閉鎖さ
れた南棟に足を踏み入れていたという奇妙な一致があった。それを機に所内やター
ナーの周辺で怪奇現象が続発するなか、かつての所長の死をめぐる陰惨な過去が浮き
上がってくる。


以前にもアルバトロスから、同じ『プリズン』ってタイトルの作品が出ていたんで
すよね。レニー・ハーリンのハリウッド進出第一弾で、そこそこ面白かったなぁと思
い出した次第。あっちは冤罪死刑囚の呪いが人を殺しまくるなんて話でしたが、こっ
ちの『プリズン』も似たようなもんです。そんなありがちな怪奇譚を、Jホラー風
(といっても『ザ・リング』『THE JUON/呪怨念』に代表されるハリウッド・リメイ
クのほう)の恐怖描写で味付けしてみましたという感じ。マイケル・パレにダニー・
トレホ、そしてトム・サイズモアという、ある意味では豪華なキャストはよろしいん
じゃないでしょうか。「スキャンダルを繰り返した果てに、こんな映画に出るように
なっちまったよ」とボヤいている感バリバリなサイズモアの佇まいは最高です。

