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ヒミツ基地

ヒミツ基地

ヒミツ基地.jpg


雨の日、会社の廊下に傘の花が咲く。
赤、紺、深緑、黒、ベージュ、水玉・・・黒、紺、茶・・・赤。
傘についた雨のしずくを乾かすために、次々に廊下に傘が開かれる。

そんな光景を見ていると、
私はなぜか「ヒミツ基地」を思い出す。

子供のとき、ほとんどみんなが持っていた
あの場所。あの不思議な空間。

私の「ヒミツ基地」は、傘の中だった。

とても小さなころの記憶。

まだとても小さかったので、
大人用の傘はまるで大きなパラソルだった。
大きな傘をいくつも開いて重ね合わせると、小さなかまくらの様な空間ができた。
そこに ぬいぐるみや、飲み物や、食べ物や、絵本を持ってきて、
自分だけの空間を作っていた。
よく 雨の日でもないのにたくさん傘を出して、
家の前に「ヒミツ基地」を作った。

今考えれば、目立ちすぎて「ヒミツ」じゃない。
でも、その傘の中は、大人の入ることのできない不思議な空間だった。

傘は光を通すので、晴れた日の「ヒミツ基地」の中は、色とりどり。
柔らかな光が 基地の中を包む。

大学の頃、教育実習で小学校2年生の担当になり、教材研究授業で「傘」を使った授業をした。
100円ショップで売っているような透明のビニール傘を使って、
自分だけの傘を作り、遊び、創造するというような内容だった。
その発想も、自分が小さい頃作っていたヒミツ基地の思い出が素となっていた。

ちょうど、6月の終わりから7月ごろだったと思う。
雨の日も、晴れの日も、曇りの日も、それぞれの楽しみ方があった。

雨の日、
透明の傘からは、雨粒が ぽつぽつと ザーザーと踊る様子が見えたりする。

雨上がりには、
水たまりに傘を浸してみたり、傘をコマのように回してみたり。

晴れの日、
傘の内側に描いた模様に光が反射し、雨の日とは全く違った顔を見せる。

晴れても曇っても、
外では 子供たちがヒミツ基地の中にもぐって、
ケタケタ笑っている。

いろんな模様や色の傘と 子供たちの声が集まったその基地は、
まるでひとつのアート。


大人になった  というか大きくなった私は、その基地の中に一緒に入って遊ぶことはできなかった。
無邪気に そして真剣に遊ぶ子供たちを見ながら、なつかしく思った。

ヒミツ基地のコピー.jpg


思い出してみると、傘でつくった小さなもの以外にも、
いくつか「ヒミツ基地」があった。


草が ぼうぼうと生え茂った空き地。

よく 友達とおままごとをした。
いろんな植物を採ってきて、石で切って、つぶして、混ぜて、こねて、
花を飾って・・・とにかくいろんなものを作って、食べるフリをした。

おままごとが 大好きだった。


神社の裏の軒下は、隠れ場だった。

児童館のそばにあった神社は、遊び場のひとつ。
どろけい(泥棒と警察の鬼ごっこのようなものを地元では、そう呼んでい た)や、
かくれんぼをするときには、よくそこを隠れ場にした。

野良犬や野良猫も、そこによく遊びに来た。


家の中の押入れ部屋も、「ヒミツ基地」みたいなものだった。

ワンブーというマヌケな犬のぬいぐるみと、
シルバニアファミリーのお家、
それからキンケシ(キン肉マンの消しゴム)と、
黒猫のミーコと、とぼけた兄。

断片的な記憶の中に、楽しかった感覚だけが残っている。


たどっていったら、どこまでも続いて行きそうな子供の頃の記憶。

雨の日の傘の花が、私にいろんなことを
思い出させてくれた。


今、私の「ヒミツ基地」は、どこに行っただろうか。

もしかしたら、

もう 絵の中にしか
残っていないかもしれない。

posted by yuratama : October 12, 2007 01:32 AM |
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PROFILE
萩野谷 直子 (はぎのや なおこ)
1980年生まれ。茨城出身。

2006年から東京で創作活動をスタート。
マイペースに活動しながら、ほんの少しずつ、
自分の作品を世に広めつつある。

映画といえば、
「アメリ」が好き。
エログロは嫌い。

幸せで
なんだかちょっと 懐かしい。
なんだかちょっと 切ない。
ゆらゆらと ゆっくりと
ついつい 足を止めて 妄想に浸ってしまう
そんな作品を つくっています。

好きな食べ物は
マルセイバターサンド。
オフィシャルHP