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やっぱり猫が好き

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昔、そんな番組がやってましたね。
もたいまさこさん、室井滋さん、小林聡美さんの3人が
マンションの1室で繰り広げる アドリブ満載の番組。
そういえば 私、あの番組好きだったな。
3人が話すいろんな話の登場人物とか、
3人の ドライなんだけど 人間臭いやり取りとか。
なんか 話の中にいろんな個性の強いキャラクターがあって、
その人をいろいろと妄想するのが好きでした。
(三谷さんが脚本書いてたそうですよ。・・・納得。)
まだ 子供だったけど、好きなものの根本は 今と何も変わってない気がする。
あの 番組タイトル、「やっぱり猫が好き」。
だけど 猫って あんまり見た印象ないな。
そういえば。
いたような気もするけど。

以前、カメの話を書きましたが、
今回は猫の話です。


実家に帰ると 必ず出迎えてくれる うちの猫。
名前は ミルク。
略して ミル。
性別  メス。
ちょっと シャム猫に似た 雑種の猫。
耳が黒くて、
シッポが白と黒とネズミ色のシマシマで、
背中が薄茶色っぽいネズミ色で、
おなかが真っ白で、
瞳が薄い青で、
目の際がアイラインを引いたみたいに黒くて、
鼻の頭がピンクと黒で、
鼻筋が真っ白に黒っぽいネズミ色の縦のマダラで、
顔の外側がうっすらネズミ色と黒のトラ模様で、
胸が真っ白で、
足の裏の毛が白と黒のぶち模様で、
肉球がほとんど黒のほんの少しピンクで、
干し芋とヨーグルトとチーズケーキとプリンが少し好きで、
お母さんのことが大好きで、
私と遊ぶのが結構好きで、
ひとりで眠っているのが何よりも好きで、
無心で毛づくろいに集中するのが好きで、
勢いよくマットで爪を研ぐのが好きで、
お風呂の蓋の上が好きで、
私が読んでいる雑誌の上が好きで、
お母さんの膝の上が大好きで、
リビングのサイドボードの上の小さな引出しの上に座って見る外の景色が好きで、
午前中の和室の畳の上にゴロゴロするのが好きで、
2階の部屋で夕日に当たるのが好きで、
コタツの中が弱1なのが好きで、
ジョウロの中に顔を突っ込んで水を飲むのが好きで、
布団の中の安全な場所にまるまるのが好きで、
新しい買い物袋の中に駆け込むのが好きで、
かわいいかわいいって言われるのが案外好きで、
高いところから人を見下ろすのが好きで、
知らない人が嫌いで、
知っている人もほとんど苦手で、
生臭い食べ物が嫌いで、
無理やり抱っこされるのが嫌いで、
お母さんに無理やり抱っこされるのはしょうがなくて、
何も言わずに家を空けられるのが大っ嫌いで、
カーテンが閉まっているのが嫌いで、
お母さんと私が夢中で何かを話して自分の事を忘れているのが嫌で、
爪きりが嫌で嫌で、
ブラッシングをされるのが嫌いで、
毛玉を吐くのが苦手で、
掃除機の音が苦手で、
車の走る音も嫌いで、
キャリーケースが大嫌いで、
病院なんてもっと大嫌いで、
ほとんど鳴かなくて、
鏡の反射した光と鳥を見つけると変な声で鳴いて、
すごい格好で寝て、
外の猫と窓越しに話をして、
太陽と一緒に動いて、
夢を見ながら寝て、
お母さんが帰ってくるとめいっぱいシッポをまっすぐ立ててお出迎えして、
無言で甘えて、
ふたりの台所仕事の邪魔をして、
夜中に私が起きていると一人で勝手に運動会を始めて、
ゆれる紐や小刻みに動く鉛筆の動きに狩の本能がめざめて、
なんでも結構飽きっぽくて、
人が何か食べてるのを見るととりあえず匂いだけは嗅ぎに来て、
マタタビに酔いやすくて、
ドライフード以外は結局ほとんど食べなくて、
トイレはいつもキレイにしていて、
どこまでも自由で 素直で 寂しがり。

ミルはこんな感じの猫。

夏の公園で拾って来てから、8年が過ぎた。
真夏、8月の公園。入口近くに小学生が群がっていて、
1匹の小さな白ネズミのような猫が、ダンボール箱の中でニーニー鳴いていた。
それがミル。
大学1年の夏休み、近所の友達と二人で遊んだ帰りだった。
小学生のざわざわした波に誘われて その白ネズミのようなミルに出会ったとき、
絶対家に連れて帰らなければいけない そんな気持ちでいっぱいになった。
猫のトイレと 猫の砂と 爪とぎと 哺乳瓶と 猫のミルク 必要なもの全部帰り道に買い込んで、無理やり 家に連れて行った。
猫が苦手だった母は、「公園に戻してきなさい」と冷たいことを言ったが、私の強引さと、
ミルの可愛さと、私が持ち出した過去の話に根負けして しょうがなく許してくれた。
私がまだ中学生の頃、同じような経験をしたことがあった。
秋の終わり、日曜日。部活帰りの夕方、ぱらぱらと冷たい雨が降っていた。
いつも横切っていた公園の茂みから、白い子猫が弱々しくこちらに向かって歩み寄ってきた。
毛が濡れていて、痩せていて、母猫もいない小さな子猫。薄暗い公園の広場を、助けを求めるように私と友人のもとに歩み寄ってくる。
二人で急いで抱き上げて、ジャージに包んで、公園の近くにあった友人のうちへ連れて行った。タオルで濡れた身体を拭いて、ミルクをやって、暖めて、友人の家族に何とか飼ってもらえないかお願いした。
でも、ダメだった。
それならうちに頼んでみようと自営業をしていたうちの店先に2人で連れて、事情を話しお願いした。
でも、ダメだった。
もう一度友人のうちに戻って、もう一度お願いしてみた。
でも やっぱりダメだった。
友人宅からたくさんのタオルとミルクをもらい、私と友人は二人でその痩せた白い子猫を抱き上げて公園へ戻った。集会所がある公園だったが、その日は休みの日で閉館していた。
私たちは、雨がしのげる集会所の入口近くにその子猫を置き去りにした。
ニーニーと鳴くその子の顔を見ることはできず、振り向かないよう走って帰った。
次の日、私と友人はどうしても気になって、その公園を遠巻きにのぞいてみた。
が、そこには悲しい光景があった。
集会所から少し離れた花壇の近くに、白い小さな何かが横たわっていた。
濡れた白いタオルのような、生きているものの気配のしない何かだった。
昨日の子猫に違いなかった。子猫と同じ形をしていた。
怖かった。
私たちは、怖くて、悲しくて、つらくて、苦しくて、
近くに歩み寄って、その姿を確認することができなかった。
二人は息を呑み、顔を見合わせ、それから顔を背けてその場を逃げるように立ち去った。
息苦しくて、その何かが頭から離れなかった。
公園から離れた場所でやっと二人の頭の中の考えが言葉に出た。
「あれ昨日の猫だよね?」「どうしよう。」「死んでたよね?」「どうしよう。」
「もう怖くて戻れない。」
私たちは、その子猫を確認して、土に埋めてやることができなかった。
また次の日、公園にもう子猫の姿はなかった。

私はこの白い子猫の話を、まるで親たちのせいで子猫が死んだとでも言うように母に話したのを覚えている。自分のことを棚にあげて、自分が猫の最後を安らかなものにしなかったことから逃げた。
私の中で、その記憶が消えることはなかった。
ミルが夏の公園で捨て入られていたとき、絶対に連れて帰らなければいけないという気持ちがしたのはそのためだと思う。飼育道具を一式買い込んで連れて帰り、親を強引に納得させたとき、自分の中で過去の痛みが少し薄れた気がした。
いろいろな思いがあったにせよ、ミルは本当に無条件で可愛かった。
小さな頃のミルはしぼりたての牛乳のように温かな白い毛並みをしていて、耳とシッポ以外はまさにミルク色だった。それでミルクという名前にしたのだが、年々色と模様が強くなって今のようなミルになった。
ミルが自分でエサを上手に食べるようになるまで母猫役は私の役目だったが、いつの間にか、
母と私の優先順位が分かったらしく、母がお母さん、私はお姉ちゃんもしくは同類、とミルのなかで決まった。はじめ猫を好きではなかった母も、ミルが自分のことを1番に見ていると知るとだんだんミルを可愛がるようになった。以前の母を知っている人が見たら別人のように思うだろう。それもこれも、私が母とミルを二人きりにしてしまったせいだなと思うが。

どこまでも自由で 素直で 寂しがり。
そんなミルの生き方と、母と私の生き方は重なることがある。
飼い主に似るというから、ミルが私たちに似たのだろう。
猫のように のんびり ゆったり 自由で どこまでも孤独で それでいて人恋しい人生を
いつの間にか送っているように思う。

「やっぱり猫が好き」の3人も そんな感じなのかな。

あの公園の猫にも、そんな毎日が待っていたのかな。

お正月に帰ったときも、
ミルは相変わらず可愛かった。
母と私に足りないのは、
ミルの この何の計算もない 素の可愛らしさだなと
つくづく思った。

2008年、もっと可愛く生きよう。

おわり
みる.jpg

posted by yuratama : January 24, 2008 02:09 PM |
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PROFILE
萩野谷 直子 (はぎのや なおこ)
1980年生まれ。茨城出身。

2006年から東京で創作活動をスタート。
マイペースに活動しながら、ほんの少しずつ、
自分の作品を世に広めつつある。

映画といえば、
「アメリ」が好き。
エログロは嫌い。

幸せで
なんだかちょっと 懐かしい。
なんだかちょっと 切ない。
ゆらゆらと ゆっくりと
ついつい 足を止めて 妄想に浸ってしまう
そんな作品を つくっています。

好きな食べ物は
マルセイバターサンド。
オフィシャルHP