映画「孤独のススメ」公式サイト » DIRECTOR’S MESSAGE

DIRECTOR’S MESSAGE

この映画は、孤独と友情、そして解放を描く笑いと涙の物語です。

『孤独のススメ』は私にとっては、私的な悟りの物語です。宗教的な教義からの解放についての映画というよりは、主人公がある洞察を得ることを巡る話であり、誰にでも当てはまる物語です。自分自身について、自分を取り巻くものについて、深い洞察を得て自由になるためにはどれほどのエネルギーと葛藤が必要かを描いていますので。この映画はまた、他人がどんなふうに力になってくれて、洞察をもたらしてくれることがるかについても示しています。もっとも、自分を解放することは一人ではできませんが、それでいて一人でやらなければなりません。脚本を書く過程で、この興味深いパラドックスがよりはっきりしてきました。

この映画はヨハン・ゼバスティアン・バッハの名言、「難しくはない。しかるべき時にしかるべき鍵盤を叩きさえすればいいのだ」から始まります。天才の口から放たれると、論理的でシンプルな言葉に聞こえますが、凡人にとってこれほど難しいことはありません。

本作を製作していた時ほど、何かに熱中したことはありませんでした。ちっとも自伝的なストーリーではありませんが、この映画をご覧になることは私の心の中をのぞき込むことです。この映画で描いたことを説明できる言葉は見つかりません。だらこそ、この映画を撮りたかったのです。

この映画は、まさに私が願っていたとおり、私が作りたいと思っていたとおりの作品になりました。トン・カスとルネ・ファント・ホフが参加してくれたことに、特に感激しています。二人は私にとって、この映画のスターティング・ポイントだったんです。二人が私の短編映画『Succes(原題)』(08)に出てくれた後で、テレビ映画『Just Hans(原題)』(09)の中でもっと長いシーンを演じてもらったのですが、その時に、私が初めて撮る長編映画では彼らに主役を務めてもらうべきだと確信しました。二人が役にぴったりはまっているのを見るたびに、最高の気分になります。

今回初めて、私は自分のことを正真正銘の映画監督だと胸を張って言えるようになりました。自分の世界を創り出して、その世界の中に1年間どっぷり浸るのは、生涯で初めてのめくるめく体験でした。今でもまだ意識を現実の世界へ戻すのに苦労しているほどです。それでも正直言って、もう一度フィクションの世界に飛び込みたくて早くもうずうずしているんですよ。

ディーデリク・エビンゲ